「付き添い入院」という言葉について

一般の人にはあまり知られていないことですが、実は日本の医療保険制度において「付き添い入院」という概念は存在しません。なぜなら、付き添いは基準看護制度¹⁾の導入によって廃止され、診療報酬²⁾の保険給付の対象になっていないからです。

しかしながら、多くの病院では、さまざまな目的から子どもが入院する際、保護者の付き添いを求めているのが実態です。その結果、一般には「付き添い入院」という言葉が定着しています。

本サイトでは、制度上の概念として存在しないけれど、一般化しているという理由からあえて「付き添い入院」という言葉を使うことをお断りいたします。

注釈

  • 1)看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」の2つに分かれます。一定の基準に合った看護サービス(療養上の世話)が提供できるように1958(昭和33)年に基準看護制度が創設されました。これにより付き添いは制度的に廃止されたものの、慢性的な看護師不足などから実態としては続いたので、1994(平成6)年に付き添いの解消と基準看護制度の見直しを目的に「新看護体系」が創設されました。これらの改革により成人への付き添いは90年代後半にはほぼ解消されています。しかし、小児への付き添いは、保護者が付き添うことによって子どもの精神的な安定を図り、治療効果を高めるという本来の目的もあり、現在も継続されています。

  • 2)誰でも必要な医療が受けられる国民皆保険制度の日本では、国が健康保険の対象となる医療行為とその対価(診療報酬)を決めています。「付き添い入院」は、健康保険の対象となる医療行為として認められていないため、付き添っている保護者に、食事・睡眠・入浴といった基本的な生活サービスが提供されないのです。

参考文献

宮里邦子:古くて新しい問題~小児病棟における母親の付き添い問題~ 熊本大学医学部保健学科紀要 1 1-6,2005-02-10 熊本大学

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