入院中の子どもと家族の実態調査結果

付き添い入院の大変さは、このサイトに訪れる経験者の皆さんが感じていることと思います。

入院する子どもに付き添う家族の置かれている環境は、もう30年以上大きく変わっていないとも言われています。その背景には、現在の医療制度上は付き添い者が不要であるために、付き添い者の実態が把握されていないことがあります。

NPO法人キープ・ママ・スマイリングは、現状をより良く変えていくためにも、まずは現状を定量・定性的に把握し、見えるようにすることが第一歩だと考えました。

そこで、付き添い者の現状を明らかにし、医療関係者とともに支援のあり方を考えるために聖路加国際大学大学院看護学研究科の小林京子教授(小児看護学)と共同で「入院中の子どもの家族の生活と支援に関する実態調査」(調査期間:2019年12月~2020年2月)を実施しました。

この調査を通して見えた付き添い入院の現状をご紹介します。

調査の背景

子どもが入院すると、子どもだけでなく家族にも様々な影響を与えること(病院に寝泊まりをして子どもの療養生活を支える、遠方からの面会を強いられる、きょうだい児の世話や仕事との調整を求められるなど)がこれまでの調査から判明しています。

そして、子どもが幼ければ幼いほど入院に付き添い、病室に泊まり込んで看護せざるを得ない親たち(特に母親)も多く存在します。また、一方で子どもに付き添いたいと思っていても、さまざまな事情から付き添えないこともあります。

このような実情がある中、付き添い家族(特に負担の大きい母親)から直接、入院中の実体験を聞き取る調査はあまり行われてきませんでした。

調査の経緯

NPO法人キープ・ママ・スマイリングでは、2019年4月に子どもの入院付き添いにおける食生活・睡眠・経済的不安などの実態を把握するために独自にインターネット調査を実施しました。

この調査により、付き添い家族の多くは生活を維持するための最低限のサポートを受けられず、栄養の偏りや睡眠不足から体調を崩したり、生活の質(QOL:Quality of Life)が著しく低下していたり、経済的困難さを抱えていることもわかりました。

この調査によって付き添い家族の実態が多少なりとも明らかになり、その支援を考えるうえで貴重な情報が得られたわけですが、すべての都道府県の付き添い経験者からの回答を得られておらず、また学術的な分析を加えたものでもありませんでした。そこで、この調査をプレ調査と位置づけ、聖路加国際大学大学院看護学研究科(小児看護学)とともに調査の質問項目を見直し、より現状が把握できるような設計に変更し、共同調査を実施しました。
 
共同調査は、2019年12月23日~2020年2月29日の期間において子どもの入院を経験した家族(母親・父親など)に対してインターネットで実施し、全都道府県から1,054名の回答を得ました。

調査サマリー

  • 実施期間: 2019年12月23日~2020年2月29日
  • 調査方法:ウェブアンケートフォーム
    (NPO法人キープ・ママ・スマイリングのウェブサイト・SNS・メールマガジンにて広報、全国のファミリーハウス102施設、患者団体128団体にチラシを郵送し広報の協力依頼)
  • 調査対象:子どもの入院を経験した家族(母親・父親など)
  • 対象者数(有効回答数):1,054人
  • *以下調査結果のパーセンテージは、欠損がある場合は有効回答に占める割合で示します。

調査概要

入院している(していた)子どもと家族の状況

  • 対象者のうち最も多かったのは母親で全体の93.9%を占めた(図1)。
  • 病児の年齢は未就学児が全体の69%を占め、そのうち2歳未満が最も多かった(図2)。
  • 調査対象となった入院の時期は、1年以内に入院していた人が566人(短期入院446人、長期入院120人)と最も多かった。1~2年以内に入院していた人170人(短期入院143人、長期入院27人)、3~5年以内に入院していた人126人(短期入院102人、長期入院24人)と合わせると、全体の8割を超えている。
  • 病児のほかにも子ども(きょうだい)がいた対象者は全体の58.4%(616人/短期入院498人、長期入院118人)だった。
  • 疾患別に入院期間を分類できたのは864人(短期入院600人、長期入院264人)だった。短期入院の場合は呼吸器疾患で入院している子どもが173人(呼吸器疾患全体の95.6%)と最も多く、長期入院の場合は新生物(血液がんを含む小児がん)が83人(新生物全体の88.3%)、循環器疾患が59人(循環器疾患全体の61.5%)と多かった。
  • 対象者の子どもが入院していた病院の種類は大学病院が35.2%と最も多かったが、公的医療機関(22.5%)や小児専門病院(20.7%)など、さまざまな病院で入院していた。

子どもに付き添っていた家族の状況

  • 対象者のうち泊まり込んで付き添っていた人は短期入院で85.0%、長期入院で86.1%と入院期間にかかわらず、泊まり込んで付き添っていた人が圧倒的に多かった(図3)。また、交代者がいなかったと回答した人は全体で28.8%(317人)いた。
  • 付き添った経験がある対象者のうち、個室での泊まり込み経験割合は48.7%、大部屋での泊まり込み経験割合は53.5%であった(複数回答。重複、不明あり)。
  • 対象者の自宅から病院までの所要時間は、全体では30分未満が42.4%と最も多く、1時間未満と合わせると約8割近くを占めた。入院期間別にみると、長期入院では所要時間が1時間未満は70.5%、短期入院では79.4%という結果となり、長期入院の子どものほうが自宅から病院までの所要時間がかかっていたことがわかった。

子どもの入院による親の就業への影響

  • 対象者のうち就業していたのは44.6%で、そのうち、子どもの入院に伴って、退職、休職、時短勤務、介護/看護休暇の取得、有給取得を行っていた対象者の割合は70.0%に上った(図6)。併せて、対象者全体の半数が経済的不安を感じたと回答した。

まとめ

今回の調査にご協力くださった人の大多数が母親であった。これは子どもの入院生活の直接的な支援の役割を母親が担っていることと関係があると思われた。また、1歳未満の子どもの入院を体験した対象者が多く、家事分担として育児休業中の母親が付き添いを担っていたことも影響していると考えられた。
本調査では明らかになっていないが、今後は男性の付き添いを許可しない施設の割合など、施設側の要因も併せて検討する必要がある。
 
対象者の8割以上が泊まり込んで付き添いを経験していたという結果は、原則付き添いを許可しない現在の制度と、実際の医療の実情との合わなさを明らかにしている。実情に合致しない制度の中で、家族も医療スタッフも、設備を整備できない、人員が不足するなどの課題に向き合っていることが推測される。
 
例えば、大部屋での付き添いを経験した人の割合は高いが、付き添うスペースなどが整っていない中での付き添いとならざるを得ないと思われる。実情に合わせて環境を整備するか、あるいは付き添いのない形で子どもの療養に対応できる適切な人員配置などが求められる。
 
また、長期療養を必要とする小児がん、循環器疾患などでは、専門医療機関での治療となるため、遠方からの入院割合も高い。病院での寝泊まりを不可とした場合、家族の宿泊施設の整備などを進めなければ、家族は安心して子どもの療養生活を支えることができず、子どもとの分断も生じてしまうおそれがある。
 
付き添いの環境整備は、単に1病院だけの取り組みではなく、病気の子どもとその家族の生活を中心に考えたトータルな療養のための仕組みづくりが必要である。
 
さらに、本調査では就労していた対象者のうちの70%が子どもの入院に伴い、就労状況の変更を余儀なくされており、子どもの入院が家族の仕事に与える影響の大きさも示された。
付き添い終了後の仕事復帰がスムーズになされなかった場合、家計に及ぼす経済的損失は長期にわたるおそれもあり、子どもの療養に対する職場の理解と、制度の整備、制度の活用のしやすさに取り組むことも重要であることが明らかになった。

「入院中の子どもの家族の生活と支援に関する実態調査」の概要はキープ・ママ・スマイリングウェブサイトからご覧ください。

「付き添い中の食事・睡眠・体調」に関しての調査結果は、こちらの記事「付き添い入院での食事・睡眠・体調は?」をご覧ください。

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